リプレイ
Battle of the
Tenaru ver1.00

以下は、筆者が木島氏とプレイしたBattle of the Tenaru ver1.00のリプレイである。

:日本軍(木島氏) 
:アメリカ軍(筆者) 
 

TURN #1



 第1海兵師団師団長A.A.ヴァンデクリフト少将の手記より。
 
 1942年8月、ガダルカナルに上陸した第1海兵師団はヘンダーソン飛行場を馬蹄形に囲む防御陣地を構え、日本軍の襲撃を待ち受けていた。日本軍は東側のタイボ岬に約1個大隊の兵力を揚陸させたということであり、東側の防御を受け持つ第1海兵連隊第2大隊は、警戒を厳にして夜を迎えた。
 21日夜半、突如として機関銃の射撃音が鳴り響く。日本軍が第1連隊第2大隊の前哨陣地に夜襲を開始したのである。機関銃1個小隊がたちまち壊滅し、もう1個小隊がテナル河畔へと後退してきたという連絡が入った。
 海と空を隔てるものは1本の水平線であり、生と死を隔てるものは1つの偶然でしかない。海兵隊は、この暑い島での戦いを生き抜くことができる出だろうか。
 

TURN #2-3



 小規模な交戦の後、戦場は突然、静かになっていた。前線の各部隊からも敵の姿を見失ったとの報告があった。
 第11連隊の75mm駄載榴弾砲は目測で砲弾を撃ち込んでいたが、暗いジャングルに時折閃光が閃くだけで、さしたる効果があるようには思えなかった。
 

TURN #4



 日本軍は突如として闇の中から第U大隊の塹壕の前に躍り出た。
 後退してきた機関銃分隊と60mm迫撃砲分隊が、目前に迫った日本軍の射撃によって撃ち倒される。
 私は直ちに無線で第11連隊に照明弾を撃ち上げるように命じた。そして、青白い光に照らし出された日本軍の2個中隊に対して第U大隊のスプリングフィールド小銃と機関銃の弾丸が降り注いだ。
 日本軍は行き足を止められて、激怒しているというよりは驚愕しているように見えた。
 

TURN #5



 しかし、我々の対峙している日本軍は中国大陸で戦闘経験を積んだ精鋭であった。彼らはすぐに態勢を立て直し、銃剣突撃を行ってきた。前線の3個小隊に3個中隊の攻勢を止める術はなく、外郭陣地は一部占領されてしまう。第U大隊E・F中隊は突破口を塞ごうと努力したが、混乱の中、連携がうまくとれず、前進したのは1個小隊のみであった。
 ただ、E中隊の.30口径重機関銃は照明弾に照らされた日本軍の側面から火箭を送り、ある程度の戦果を得た。
 

TURN #6



 第U大隊は小銃射撃と重機関銃の掃射でできる限りの反撃を行っている。
 また、西側の第5海兵連隊第V大隊の守備地区でも攻撃を受けた。もっとも、こちらは陸軍ではなく、陸戦の技術に劣る海軍陸戦隊が相手であり、陣地を突破するほどの戦闘力は無いようである。
 

TURN #7-8



 日本軍は満を持して突撃を開始した。2個中隊相当の日本軍が歓声を上げて突進し、前方の重機関銃小隊が粉砕された。また、第二線の37mm対空砲1個小隊も一弾も放つことなく手榴弾で破壊されてしまう。隣接する陣地の対空砲が突出した日本軍に対して射弾を送ったが、その弾着は深いジャングルに吸い込まれ、効果の方は確認できなかった。
 

TURN #9



 日本軍は激しい射撃後、再び前進を開始した。彼らは第U大隊E中隊とF中隊の間隙を突破して第11海兵連隊の75mm駄載榴弾砲の陣地に迫りつつあった。この状況を知った第U大隊長E.A.ポロツク中佐はF中隊の1個小隊を率いて、砲兵陣地の守備についた。
 この時、西側でも海軍陸戦隊が奮戦し、バンザイ突撃で1個小隊を波打ち際まで追いやっていた。
 

TURN #10



 飛び交う銃弾の中で、ポロツク中佐の陣地は固守されていた。もう少し兵力があれば万全だったが、各大隊はまだ出動準備を終えていなかった。
 

TURN #11



 私の元に、悲しむべき報告がもたらされた。日本軍の白兵突撃によって第U大隊長E.A.ポロツク中佐が戦死したのだ。負傷した彼は、担架に横たわりながら最後まで拳銃をうち続けていたという。第U大隊の指揮は第1連隊長のC.B.ケイテス大佐が引き継ぐ。
 同時刻、戦線の後方では、第U大隊H中隊の重機関銃小隊が行軍中の日本軍歩兵砲を発見し、白兵戦によってこれを破壊した。日本軍はほとんどの部隊を前線に投入しており、退路の確保を怠っていた。前線の大隊をうまく配置できれば、彼らを深いジャングルの中に閉じこめることができるかもしれない。
 

TURN #12-13



 激しい戦闘が続いていた。断固として、日本軍の前進をくい止めなければならない。私は師団予備であったM.N.マッケルベイJr中佐の第1海兵連隊V大隊とM2軽戦車からなる戦車A中隊の前進を命じた。
 ただし、日本軍のペースに陥るのは危険であった。勇猛な海兵隊とはいえ、熱狂的な天皇の軍隊と至近距離で白兵戦を行うのにはリスクが伴う。自動火器の多い我々の方が優位な、射撃戦のみによって敵を撃破するのが望ましいのである。
 

TURN #14



 日本軍の急速な前進により、第11連隊第U大隊司令部が危機に陥った。しかし、後退命令に対する彼らの返答は、海兵隊の戦史に特筆されることになるだろう。「司令部の現在位置を砲撃されたし」である。
 第5連隊の正面では、再び前進してきた陸戦隊に激しい銃火を浴びせ、日本刀を持った指揮官らしき人物を射殺したとの報告が入った。
 

TURN #15



 日本軍の攻撃によって、50高地の第11連隊第U大隊司令部が壊滅する。自衛のための手段をほとんど持たぬ砲兵が、敵歩兵に近接されてはひとたまりもない。第1連隊第V大隊はようやく戦場に到着したが、彼らを救うことはできなかった。
 

TURN #16



 第1連隊第V大隊は左右に各中隊を展開し、距離約300mで射撃戦を開始した。我々は日本軍の前進を期待していたが、狡猾な彼らはジャングルの茂る50高地に陣取ったまま動こうとはしなかった。平地から遮蔽効果のあるジャングルを撃つのは必ずしも得策ではなかったが、海兵隊のBARや軽機関銃の火力、そして適切に打ち上げられる照明弾が優位を逆転させていた。
 

TURN #17



 東側陣地の後方に据え付けてあった第1支援大隊のM1A1 90mm高射砲が日本軍陣地に対する猛射を開始した。距離は約1000mである。高初速の高射砲から発射される榴弾は低伸して高い命中率を誇り、50高地付近の日本軍に大きな打撃を与えたようだった。彼らは砲撃を避けるためジャングルに撤退した。今こそ、歩兵の前進すべき時である。 
 

TURN #18-19



 第1連隊は全面で前進し、日本軍を両翼を延伸して包囲態勢を取る。
 また、東方へ索敵前進中の第1連隊第U大隊F中隊が敵連隊司令部を発見したため、直ちに戦車中隊を向かわせた。


東方へ脱出しようとする日本軍縦隊に対して南北から2個中隊が攻撃を行う。発見された連隊司令部は、孤立無援の位置にあった。
 

TURN #20-22



 ついに、第1連隊第T大隊A中隊と第V大隊K中隊が遭遇し、包囲の環が閉じた。散発的な日本軍の攻撃があったが、大勢を覆すほどではなかった。
 敵の連隊司令部にはM2軽戦車が突入し、連隊段列を破壊することに成功した。
 

TURN #23



 全戦線に渡る激しい一斉射撃の後、海兵隊は銃剣を構えて突撃した。
 天皇の軍隊は降服を許されないということであったが、我々はもはや戦意を失った2個中隊相当の捕虜を得ることができた。


もはや日本軍に残されたのは1個中隊の兵力と彼らがようやく展開できるだけの空間だけであった。
 
 

TURN #24



 日本軍は突如、喚声を上げて包囲陣の海兵隊に突撃してきた。私も含め、もはや戦闘は終盤であると考えていた者たちは、包囲陣が破られ、彼らが南東へ脱出していくのを見守るしかなかった。しかし、飛行場の防衛という戦略的な目標は達成されている。この上、部隊を消耗させて戦術的な勝利を求める必要はなかった。
 海兵隊は勝利を収めた。実戦を初めて体験する新兵たちにとっては、貴重な勝利である。
 かくして、「海兵隊は向かうところ敵なし」となった。
 

分析



 日本軍としては、作戦の大前提として前進して拠点の奪取が必要となる。史実での一木大佐はテナル河の強行渡河を試みたが、さすがに開豁地を横切って陣地に正面から突っ込むのは無謀である。自軍の損害を押さえるためには、木島氏がそうしたように、若干の時間的浪費に目をつむり、南側の深いジャングルを通過する方べきであろう。このゲームでは、ジャングルの地形効果は非常に高く(浅ジャングルで火力×0.7、深ジャングルは火力×0.6)、射撃戦を回避する最も有効な手段となる。当然、ジャングルの中では日本軍の火力も低下するため、突撃前準備射撃の効力は低下するが、攻撃側は通常2個小隊、損害を度外視する場合は3個小隊のスタックで防御側の1個小隊に当たることが可能であり、より効率的な前進が行えるだろう。ただ、このテナル河畔のジャングルように、周囲をより移動容易な地形に囲まれている場合は、ジャングルを抜けきらないうちに包囲されてしまうリスクも考慮しておく必要がある。
  一方、海兵隊は射撃戦に徹する必要がある。
 海兵隊小隊は日本軍の精鋭小隊に火力でやや優るが、白兵戦力で決定的に劣る。しかも、日本軍は3個小隊スタックに指揮官を加えて万歳突撃を行ってくるので、敵に隣接した状態でターンを終えるのは非常に好ましくない。序盤では一撃を与えて1ヘクス後退していくのが常道になるだろう。ただし、大半の部隊がFixしているこのシナリオにおいては、砲兵や司令部を守るために、犠牲を払うことも必要になる。
  アメリカ軍の場合、常に砲兵は重要なファクターとなる。しかし、このシナリオに関して言えばそれは当てはまらない。揚陸未了のため、砲兵は75mm駄載榴弾砲が主力となっており、夜間シナリオということもあって砲撃の効力は発揮し難いのである。砲兵は照明弾撃ち上げ用と割り切った方が良いかもしれない。
 中盤以降、第1海兵連隊が投入されれば、アメリカ軍は決定的に優位となる。アメリカ軍プレイヤーに必要なのは、序盤の犠牲に耐える忍耐であろう。